DAOとは?
2022.01.22
2022年は「DAO元年」といわれるほど注目を集めているDAOについて、調べたことをまとめ考察していきます。
適宜追加していきます。
DAOとは?
- 英語:Decentralized Autonomous Organization
- 日本語:自律分散型組織
- 定義:非中央集権的な特定の目的を持ったオープンなネットワーク
DAOは「特定の目的を持ったコミュニティ」であり、特徴としては2つの要素を持っております。
- スマートコントラクトが基盤であること
- オープンであること
スマートコントラクトとは「契約の自動化」を指す言葉で、「あらゆる取引が自動化されて自律的に動くコミュニティ」がDAOです。
もう少し具体的に説明すると、ガバナンス設計やインセンティブ設計等全ての取り決めをブロックチェーン上で可視化し、目的遂行のために各々が自律的に活動するコミュニティです。
なぜ今、DAOが流行っているのか?
「これ」といった断定は難しいです。複合的な要素が絡み合って今のDAOが注目を集めているからです。
ただ、大きくは「NFTの存在」と「儲けを無視できない」という2つの側面が大きいと考えられます。
NFTの存在
当時は「クリプトの世界は特定の世界で輝くもの」という認識が大多数でした。
実際に、ビットコインだけ見たら「金(ゴールド)に代替するもの」としての地位は確立しましたが、その他の実用性でいうと皆無です。
しかし、NFTによって「マス向け流行るんだ」と認識が覆されました。
NFT売却事例
- NBAスター・レブロンジェームズのビデオグリップが20万8000ドルで売却
- サッカー界スター・クリスティアーノロナウドのカードが3,200万円で売却
NFTが注目を集め、NFT販売者が増え、NFTの販売で生計を立てる人が増えたりと、一般層に広がり定着しました。
このNFTの存在によって、DAO含めたブロックチェーン熱が加速した、という背景があります。
儲けを無視できない
「DAOで大金が舞い込む」という現状を、投資家が無視できない状況になりました。
DAOやDeFiの存在によって世界では10〜20代で数百億円稼ぐ人が誕生しました。
その結果、懐疑的だった投資家も無視せざるおえない状況になり、有名投資家がDAOに数十億円の投資を皮切りに、一気に広まったという経緯です。
DAOの仕組み
DAOの構造を簡易的にまとめると、以下のようになります。
- ガバナンストークン保有者が投票によってDAOの意思決定を行う
- 意思決定によって決まった事柄をコントリビューターを中心に推進させる
- 全ての取り決めはスマートコントラクトに設定する
- スマートコントラクトの情報をブロックチェーン上に残す
- DAO内の資産は全てコミュニティウォレットで管理する
- コミュニティウォレットの使い方はガバナンストークン保有者の使い方によって決まる
まとめると、DAOの中核となるのは以下5つの要素です。
- ガバナンストークン(株式)
- コントリビューター(チームリーダー)
- スマートコントラクト(ルール)
- ブロックチェーン(セキュリティ担保)
- コミュニティウォレット(財布)
それぞれ解決していきます。
1.ガバナンストークン
DAO内の株式のような役割を果たすもので、ガバナンストークン保有者がDAOの目的のための全ての意思決定を行います。
スマートコントラクトに記述するインセンティブ設計、ガバナンス設計、小ミュニティウォレットの使い道等、全てをガバナンストークン保有者が決定します。
ガバナンストークンの入手方法は「取引所で購入する」あるいは「DAOで貢献して報酬で受け取る」などの方法があります。
2.コントリビューター
ガバナンストークンの意思決定を推進していく、DAO内の中核となる人たちです。
社でいうとチームリーダーのような役割です。
コントリビューターの選定はガバナンストークン保有者によって行われ、選定基準はDAOの目的への貢献度合いで判断されます。
面白いのは、DAOは出入り自由なので、突然コントリビューターがいなくなるなんてこともあります。
3.スマートコントラクト
DAOの軸となるプログラムを指す言葉がスマートコントラクで、「契約の自動化」と言われます。
DAOの目指すところは「自律」であり、人を介在せずに目的に対して自走していくコミュニティです。
なので、このスマートコントラクトの確立こそが、DAOの目的のために最適化していく上で最も重要なことなのです。
4.ブロックチェーン
全ての情報やコードが改竄されない状態で保持するための技術です。
スマートコントラクトで行うガバナンス設計やインセンティブ設計等も、全てブロックチェーン上に保存することで改竄を不可能なものにします。
5.コミュニティウォレット
DAO内の全て資産を管理するお財布です。
資産をどのように使用するかは、ガバナンストークン保有者によって決まります。
DAOの特徴
DAOはまだまだ模索段階であるゆえに、「DAOとは」を明確に定義することは不可能です。
なので、現時点でよくあるDAOの特徴を解説していきます。
全てがオープン
「全て」には以下のようなものがあります。本当に「全て」です。
- 匿名で参加/退会がいつでも可能
- DAOにいくら資産があるか
- 誰がいくら報酬をもらっているか
- 誰がどんなやり取りをしているか
- 何をしたらいくらの報酬がもらえるか
- 組織の全ルール
- スマートコントラクトのコード
特定の人のみが知っている情報は原則ありません。
全てがスマートコントラクト(もしくはテキストベース)に記載され、ブロックチェーンに管理されています。
リーダーやマネージャーがいない
DAOにはリーダーという存在がおらず、「ガバナンストークン保有者」と「コントリビューター」が存在します。
- ガバナンストークン保有者(株主のようなもの)
- コントリビューター(意思決定をもとに作業する人)
優劣をつけるものではなく、ガバナンストークン保有者が意思決定を行い、決められたインセンティブ設計の中でコントリビューターがDAOを推進させる、というものです。
もちろん、ガバナンストークン保有者兼コントリビューターも存在します。(というかほとんどが兼任)
匿名でフラットな参加可能
極端な話、犯罪者だろうが薬物中毒者だろうが何も問われず匿名で参加可能です。
そして、DAOは圧倒的現場実力主義です。
「今、あなたは何を貢献しているか?」という点だけ考慮されます。
報酬も何をしたかで決まります。
なので、誰でも匿名で参加可能で、気に入らなければ退会も可能です。
DAOの問題点
DAOは模索段階であり、まだまだ問題点だらけです。
セキュリティ問題
DAOはコードでできており、コードは人が作ります。
そのため、セキュリティリスクは常につきまとうのです。
最も有名なDAOのハッキング事件が「The DAO」で、セキュリティの貧弱性をつかれて50億円相当のイーサリアムがハッキングされました。
当初からセキュリティホールは懸念されていましたが、後回し後回しになった結果、大きなハッキングへ発展しまいました。
[余談]:The DAOのハッキングによってイーサリアムがハードウォークを余儀なくされイーサリアムクラシックが生まれました。
ガバナンス設計問題
DAOの形は模索段階であり、特にガバナンス問題は多くの課題を抱えております。
中心人物が突然いなくなる
DAOの参加/退会は自由で、途中で抜け出しても誰にも責任はありません。
自由の反面、突然コントリビューターがいなくなることもあります。
当然、DAOの構想者がいなくなることだってあります。
このように人の入れ替わりが自由であるがゆえに、DAOを推進する人が突如と消えてDAOが機能しなくなる可能性もあるということです。
乗っ取り問題
DAOの意思決定はガバナンストークン保有者によって決まります。
そうなると、悪意を持ったガバナンストークン保有者がDAOの権限を第三者に付与する、と言う提案も可決することもできるのです。
実際に起こった事例が「Venus」というDAOです。
悪意を持ったガバナンストークン保有者が「この団体を改名しよう」という提案を行い、可決してしまったという事例です。
結果としてVenusの中心メンバーが「キャンセル」という強引なやり方でこの問題を阻止しました。
ただ、乗っ取りが可能なことや、DAOの根底を揺るがす強引なやり方でのキャンセル含め、ガバナンス問題が可視化した実例です。
中央集権構造化してしまう問題
DAOはガバナンストークン保有者によって意思決定が行われます。
つまり、スマートコントラクト次第では、ガバナンストークン保有量によってDAOへの影響力が決定してしまう、という問題に直面します。
実際に「Uniswap」という非中央集権型取引所の開発者が「UNI」を大量保有しており、「脱税目的」等の疑いかけられて2021年に米規制局SFCが調査を行う事態に発展しました。
調査結果は不明ですが、DAOは中央集権構造になりうる可能性があり、悪用される可能性もある、ということです。
インセンティブ設計問題
DAOはコントリビューターの自発的な行動によって推進されるのですが、数値化できない貢献をどのようにプログラムにするか、という問題があります。
これはDAOに限らず株式会社でも起きている問題ですが、特にDAOはコードによって意思決定を行うようプログラムする必要があるため、非常に難しい問題として取り上げられています。
法律的問題
DAOで設定したスマートコントラクトが「とある国では合法」だが「とある国では違法」という問題です。
一例として「Augur」という賭博系のDAOがあるのですが、日本では法律違反に抵触する可能性があります。
そしてさらに大きな問題として、現時点ではDAOは無限責任を問われる可能性がある、ということです。
米ワイオミング州では「DAO法」が施行され、有限責任の扱いになっておりますが、世界的に見るとまだまだ無限責任として扱われます。
これらの法律問題は全く追いついておりません。
DAOの最たる例が「ビットコイン」
私たちが最初に触れたDAOは「ビットコイン」です。
ビットコインには「Bitcoin Core」という中心メンバーが存在するのですが、提案は可能で、可決されれば採用されます。
さらに面白いことに、提案し採用されてもインセンティブは発生しないのですが、それでもビットコインの目的のために多くの人が自発的に活動しているコミュニティだ、ということです。
また、開発者のサトシナカモトが現場を離れている、という点も、DAOの目指すべき構想に非常に近い点から、ビットコインは最も最初にDAOといって差し支えないかと思います。
これからのDAO
まず、現状としてDAOは拡大フェーズに入っております。
2021/5の時点で、「MakerDAO」というDAOは1ヶ月で1億2500万ドル($125 million)の収益を得ているほど、DAOの存在は一気に拡大しております。
そして、これからのDAOの役割は、既存の組織形態を淘汰(ディスラプト)するものではなく、長所短所を活用して共存し合う世界が生まれる、というのが多くの方の見解です。
イーサリアム開発者のヴィタリック・ブテリンによると、DAOによって組織の在り方は以下のようになると語っています。
- 従来通りの株式会社(経営者有/労働者有)
- ロボットを使う企業(経営者有/労働者無)
- DAO(経営者無/労働者有)
- AIによる完全自動企業(経営者無/労働者無)
具体的にDAOの組織を現在の業態で例えると「出版社」の例がわかりやすいです。
「出版社」がDAOで運営されると、以下のようになります。
- トークンを発行
- 投票・掲載作品を参加者で投票
- 商品の印刷・販売で利益化
- 利益を参加者で分配
実際に行うとなると考慮すべき点は多岐に渡りますが、大まかな流れはDAOでも可能、という一例です。
DAOが全てを置換できるものではないですが、DAOの方が良いよね、とされる組織形態がある、ということです。
2022年は「DAO元年」といわれるほど盛り上がりを見せております。
これから確実に来るであろう未来に、少しでも触れてみることをお勧めします。