翻訳の外注費って源泉徴収は必要?日本人と外国人で違いはあるの?を調べてみた
2019.02.26
訪日外国人向けにホームページやメニュー表を多言語対応する際、ふと疑問が。
翻訳の外注費って、源泉徴収必要なの?
「そういえば、そもそも翻訳って源泉徴収必要なのかな?外国人への外注費って、日本人へ外注するのと何か違うのかな?」と疑問に感じたので、「翻訳の外注費における源泉徴収」に関して、徹底調査してみました。
では、早速説明していきます。
翻訳の外注費に源泉徴収が必要な条件
全ての翻訳の外注費に源泉徴収が必要な訳ではなく、翻訳の中でも「二次的著作物の利用」に該当する場合のみ、源泉徴収が必要になります。
「二次的著作物の利用」を専門用語で説明すると、次の通りです。
著作権法第二十八条
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
専門用語だとわかりづらいので、具体的な例を一覧にしてまとめてみました。
- ドラゴンボールを翻訳し、第三者が海外で販売する
- ワンピースを翻訳し、第三者が海外で販売する
- ナルトを翻訳し、第三者が海外で販売する
上記が、二次的著作物の利用に該当します。
つまり、誰かの作品を翻訳し、第三者が販売する翻訳のみ、源泉徴収が必要だということです。
「第三者」であること、「販売」が目的であること、これらに合致しない翻訳は、二次的著作物の利用に該当しないため、翻訳の外注費に源泉徴収は必要ありません。
当然、自社のホームページや、メニュー表の翻訳には、源泉徴収は必要ありません。
僕のケースも、自社のホームページの翻訳なので、翻訳の外注費の源泉徴収は必要ありませんでした。
「二次的著作物の利用」でも源泉徴収が発生しない2つのケース
また、二次的著作物の利用に該当する翻訳であったとしても、下記2つの翻訳には源泉徴収は必要ありません。
- 「源泉徴収義務者」でない場合
- 「非居住者」の場合
上記2つは、二次的著作物の利用であっても、翻訳の外注費の源泉徴収は必要ありません。
それぞれ解説していきます。
「源泉徴収義務者」でない場合
依頼主が源泉徴収義務者でなければ、そもそも源泉徴収は不要です。
下記4つのいずれかに該当する場合が、源泉徴収義務者となります。
【源泉徴収義務者】
- 法人の場合
- 従業員を1人以上雇っている場合(パート、アルバイトも含む)
- 青色事業専従者への給与・退職金を支払っている場合
- 常時3人以上の家事使用人がいる場合(こんな人いるのかな)
つまり、個人事業主で、誰も雇っていない場合は、基本的に源泉徴収義務者に該当しません。
また、青色事業専従者がいたとしても、「毎月の給与が88,000円未満」かつ「扶養控除等申告書を提出している」場合は、翻訳料を含む外注費は源泉徴収が免除されます。
「非居住者」の場合
翻訳する外注先が、非居住者の場合は注意が必要です。
居住者か非居住者かは、日本の住む期間にって区分されます。
【居住者】
日本に1年以上住む予定
【非居住者】
日本に住む予定が1年未満の方
上記の非居住者に該当する場合、日本に住んでいるかどうかによって源泉徴収が必要かどうかが異なります。
居住者 | 源泉徴収必要 | |
---|---|---|
非居住者 | 日本滞在 | 源泉徴収必要 |
日本にいない | 源泉徴収なし |
つまり、非居住者でも、日本に滞在している外国人は、源泉徴収の対象となります。
しかし、日本に滞在している非居住者の場合でも、「租税条約締結国」であれば、源泉徴収が不要になります。
【租税条約とは】
二重課税を排除するための国同士の取り決めです。
しかし、日本と租税条約を交わしている国とのやりとりの場合、源泉徴収が不要になります。
租税条約締結国に該当するかどうかは、「租税条約締結国」で調べてみてください。
ただし、租税条約締結国に該当するからといって源泉徴収が免除になるわけではなく、「租税条約に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。
租税条約締結国に該当する非居住者の源泉徴収を免除する方法
下記5つの必要書類を「正本」と「副本」をそれぞれ1部ずつ揃え、税務署に提出します。
- 租税条約に関する届出書(使用量に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除(様式3))
- 特典条項に関する付表
- 居住者証明書
- 実際に翻訳したものと翻訳前の原本
- 翻訳者との契約書
「租税条約に関する届出書」を提出する際の注意点が、翻訳料を支払う前に書類を提出しなければいけない点です。
もし、提出が間に合わなければ、一旦源泉徴収を支払い、後日「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することで、一度支払った源泉徴収を還付することができます。
翻訳の源泉徴収は基本的に不要なので、特に気にしなくて大丈夫!
ほとんどの翻訳が、ホームページやメニューなどの多言語対応なので、源泉徴収は必要ありません。
また、該当する場合でも、源泉徴収義務者でない場合、非居住者の場合は源泉徴収が不要になります。
以上、翻訳の源泉徴収に関してでした。