従業員10人未満の経営者でも就業規則を作成すべき過去4つの判例

「就業規則は10人未満であれば作る必要はない」と思っている経営者の皆様、その考えは非常に危険です。

過去の判例で、就業規則によって救われた会社、損失を受けた会社は沢山あります。

そこで、今回は就業規則の基本的な理解、就業規則を作るべき4つの事例についてお伝えします。

1.就業規則とは

就業規則は労働条件に関する取り決めを定める規則で、従業員が10人以上であれば作成義務が発生します。

「従業員が10人以上」とは、事業所ごとに判断し、正社員はもちろん、パートや契約社員も含まれるということです。

2.就業規則の内容

就業規則の内容は大きく分けて3つあります。

2-1.絶対的必要記載事項

  • 1.労働時間・日数に関すること
  • 2.賃金に関すること
  • 3.退職に関すること

2-2.相対的必要記載事項

  • 1.退職手当に関する事項
  • 2.臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  • 3.食費、作業用品などの負担に関する事項
  • 4.安全衛生に関する事項
  • 5.職業訓練に関する事項
  • 6.災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 7.表彰、制裁に関する事項
  • 8.その他全労働者に適用される事項

2-3.任意記載事項

上記の2つ以外に盛り込みたい内容があれば、任意で記載することも可能です。

3.就業規則の効力

就業規則の法的効力に関して、労働者側の罰則経営者側の罰則の両方の側面を見ていきます。

労働者側への効力

労働者側への効力として、就業規則内に『罰則』『減給』『出勤停止』『降格』『諭旨解雇』『懲戒解雇』といった懲戒制度が設ることができます。

ただし、いきなり懲戒にできるわけではなく、懲戒処分が法的に有効とされるためには段階を踏む必要があり、これを『懲戒権の段階的行使』と言います

労働契約法第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

労働契約法 – e-Gov法令検索

経営者側への効力

当然、就業規則には経営者にも守る義務があります。

経営者側が訴えられる流れは下記のようになります。

  • 従業員から書面による通達
  • 労働基準監督署からの通達
  • 裁判

最悪の場合、犯罪となってしまうのでご注意ください。

4.就業規則の締結までの流れ

就業規則が法的効力を有するまでの流れは下記のとおりです。

  • 1.就業規則作成
  • 2.従業員への周知
  • 3.従業員へ意見聴取
  • 4.労働基準監督署へ提出

1.就業規則作成

上記の『絶対的必要記載事項』と施工日をつけていれば最低限問題ありません。

2.従業員への周知

就業規則を作成後、従業員へ周知する義務があります。

また、締結後も従業員がいつでも見れるよう状態にしておく必要があります。

  • 1.事業所内の見やすい位置に掲示する
  • 2.入社時に書面で交付する
  • 3.各パソコンに保管しておく

3.従業員へ意見聴取

就業規則は経営者が作成するだけなく、従業員代表者の同意が必要になります。

労働基準法第90条
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

労働基準法 – e-Gov法令検索

4.労働基準監督署へ提出

1-3を行った後、労働基準監督署へ提出を行います。

提出する際は下記3点が必要になります。

  • 就業規則届
  • 意見書
  • 就業規則×2

5.作成すべき4つの事例

就業規則によって経営者が大損・救われた例を、過去の判例をもとにご紹介します。

ビクター計算機事件

賞与の適用範囲が不明確だったため、賞与算定期間に退職した者に対して、労働期間の割合に応じて賞与の支払いが命じられました。

大興設備開発事件

就業規則に退職の適用範囲を明確にしていなかったため、パートと高年齢従業員(60歳以上)に対して退職金の支払いが命じられました。

フジ興産事件

従業員が職場秩序を乱したとして懲戒解雇処分を会社側が言い渡したが、就業規則の適用範囲が従業員が働く事業所には適用されていなかったため、懲戒解雇処分が取り消されました。

大和銀行事件

賞与の支払い対象者を「支給日に在籍する者」と限定していたため、算定期間に働いていたが支給日に退職した者に対して支払い義務が発生しませんでした。

6.モデル就業規則

厚生労働省が就業規則のモデルを公表しています。

こちらの就業規則を参考に作成するのがオススメです。

モデル就業規則について |厚生労働省

7.業規則のまとめ

  • 就業規則は労働条件についての基本的な取り決め
  • 会社と従業員代表者の意見書を労働基準監督署へ提出して効力を発揮する
  • 就業規則は労働者・経営者両方を守るために存在する

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