【ファクトフルネス(FACT FULNESS):感想】物事の本質を捉える力が身に付き、情報収集精度が高まる本
2019.04.18
問題です。
【問題】世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
- A 役2倍になった
- B あまり変わっていない
- C 半分になった
【問題】世界中の1歳児の中で、なんらか病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
- A 20%
- B 50%
- C 80%
この問題の日本での回答率は、それぞれ10%と6%で、私も間違えた問題です。
なんとなくお気づきかと思いますが、答えは両方とも「C」です。
この問題は何もあなたがだけが間違えた問題ではなく、政治家やジャーナリスト、研究者といった日々世界の情報に触れている人たちでさえ間違えている問題なのです。
きっとあなたは世界をこのように見てはいないでしょうか。
「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう。」
現実はそんなドラマチックな世界はなく、アフリカ諸国も先進国に負けじと圧倒的なスピードで進歩しているのです。むしろ格差は狭くなっています。
では、何故このように「ドラマチックな世界」を想像する人が多いのでしょうか、この原因こそがファクトフルネスで問題定義している「10の本能」なのです。
私たちはこの「10の本能」によって、情報を過大解釈し、また誤って受け取ってしまうのです。
この「10の本能」に気づき、情報を正しく解釈することで正しい選択ができる、ということをファクトフルネスから得られます。
僕自身も意識して偏見を持たないように生きてはいましたが、それでもファクトフルネスを読んで新しい視点を得ることができました。
それでは本書の感想をまとめていきたいと思います。
ここ数十年間、わたしは何千もの人々に、貧困、人口、教育、エネルギーなど世界にまつわる数多くの質問をしてきた。
医学生、大学教授、科学者、企業の役員、ジャーナリスト、政治家 ー ほとんどみんなが間違えた。みんなが同じ勘違いをしている。
本書は、事実に基づく世界の見方を教え、とんでもない勘違いを観察し、学んだことをまとめた一冊だ。
事実に基づいて世界を見られれば、人生の役に立つし、ストレスが減り、気分も軽くなってくる。
ファクトフルネスから学ぶ「10の本能」
情報のデータは正しくても、その情報の受け取り方によって情報は形を変えます。
特に、人間が持つ「10の本能」は、情報を誤った解釈に導いてしまうことが多いので、「10の本能」を理解することが大切だと述べています。
早速、10の本能を見ていきます。
分断本能「世界は分断されている」という思い込み
人は分断した方がわかりやすく、また目に留まりやすいため、メディアではしばしば2極化する方法をとります。
低所得者と高所得者、先進国と後進国など、対立構造を用いて説明しますが、ほとんどの場合、極端に2極化されることはなく、大多数が中間に位置します。
ファクトフルネスでは、実際の数値として「世界で最も多く暮らしているのは中所得者」という国連のデータをもとに説明しています。
対立構造に惑わされず、データの”個”にも目を向ける必要があるのです。
ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
「貧困やテロ問題は年々過激になっている」という認識をしている人が多いが、実は全くそんなことはなく、どちらも着実に改善されています、
けれど、いまだに「世界は格差が広がり、テロが頻繁に起こり、ますます悪くなっている」と思い込む人が多いです。
このネガティブに捉える原因こそがネガティブ本能であり、これはネガティブな情報は過大解釈され、拡散されやすいからです。
あなたの身の回りでも経験したことがあると思いますが、悪い情報はビックリするほどすぐに広がります。また、湾曲して広まる事も多いです。
週刊誌がやっている事もまさにこれで、芸能人のバッドニュースを流して拡散効果を期待したマーケティング手法なのです。
ネガティブな情報が圧倒的に多いという事実を踏まえ、「世界が悪くなっている」と鵜呑みにしないようにしましょう。
直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
例えばボールが顔の前に向かってきたら必然と避けると思います。
これは、ボールの軌道を予想して避けるのですが、この「軌道を予想する」というのが直線本能です。
同じように、データがグラフがあると、その数値は同じように推移していくと直感的に感じてしまうのです。
一時期流行った仮想通貨も同じ現象が起き、多くの人が「これは大儲けできる」と錯覚して購入したが、途端に下落して大損しました。
データは直線的ではなく常に不確定要素の大きいものだと踏まえて見るように心がけましょう。
恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
恐怖心を煽るものは本来よりも誇大に受け取りやすい傾向にあります。
例えば、テレビで報道される「テロ」によって、どの程度人は亡くなっているのでしょうか。
項目 | 世界の死亡数に対しての割合 |
---|---|
飛行機事故 | 0.001% |
テロ | 0.005% |
自然災害 | 0.1% |
飛行機事故 | 0.7% |
なんと、世界の死亡理由の中でたった0.05%なのです。
しかし、テロのニュースがたくさん流れると、多くの人がテロによって亡くなっていると錯覚を起こしてしまうのです。
恐怖心を煽るような情報は、過大評価しないようにしましょう。
過大視本能「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
可視化されたものは過大評価されやすく、例えばこんなポスターがあったとします。
「世界には420万人の子供が亡くなっている現実があります。だから募金をお願いします。」
「420万人」という数字だけを見せられるととてつもなく大きな数字と感じるかもしれませんが、例えば1950年が1,440万人だったことと比べるとどうでしょうか。
420万人が少ないとは言いませんが、数字の見え方は変わってくると思います。
このように、目の前に叩きつけられた数字だけを見せられると、正しい大きさを捉えることができなります。
目の前の情報のみに引っ張られるのではなく、物差しを持って情報を受け取りましょう。
パターン化本能「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
メディアが非常に得意な方法で、「非行に走る子の親は母子家庭が多い」などといった類いです。
また、自分の日常を常に他にも当てはめてしまうことで、例えば「赤信号は危険」というのも、パターン化本能です。
世界に出れば自分のパターンのほとんどが通用しないということ、当たり前かもしれないですが、どの水道水を飲んでも安全に飲めるのは世界でもごくわずか。
パターンには常に例外があること、自分のパターンは一歩外に出れば通用しないということが大切です。
宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
「アフリカってまだまだ貧困だよね」と思っている方はまさに宿命本能の”賜物”で、アフリカの”平均”を見れば確かにまだまだ諸外国と比べて貧困だが、国単位でみると世界の平均寿命を上回っている国はいくつかあります。
確かに先進国とまでは言えないかもしれないが、確実に進歩している現状があるにも関わらず、まるで宿命であるかのように「アフリカは貧困」と定義づけているのです。
全ての物事は変化している、そこをしっかりと見つめることが大切です。
単純化本能「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
物事を片方の側面で見て判断してしまうことです。
単純化には素晴らしい側面もある。物事をシンプルにした方がわかりやすくて、余計なことを考えずに済むからです。
しかし、単純化しすぎるあまり、短絡的な思考に陥り、間違った解釈をする可能性があるということです。
自分の中で出た結論に対して、一度立ち止まり遠くから見つめてみましょう。
犯人探し本能「誰かを攻めれば物事は解決する」という思い込み
責任の所在を明確にして、次の対策をうつ、これはビジネスでも同じことが言えます。
しかし、結果というのは複数の要素によって成り立っているので、「これが原因です」と明確な答えを出すことは非常に難しいです。
原因を見つけることは素晴らしいことですが、見つけた原因が全てではなく、その背景にある無数の要因にも目を向けなくてはいけません。
焦り本能「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
例えば、「2時間後に大地震がきますので、急いで東京から避難してください」と言われれば、我先に外に出て避難することでしょう。
そうして、結果として道路が大渋滞を起こし、多くの人が逃げ惑い自然災害の餌食になるーーーー
極端な話ですが、今すぐというのはリスクもあるということです。
一昔前、狩りの時代は焦り本能は非常に役に立ち、例えばライオンが見えたら逃げるなど、命を救う本能でした。
しかし、過激な対策は時に危険であるということを覚えましょう。
何か起こった時は、一度足を止めてその場で深呼吸するべきなのです。
【感想】ファクトフルネスから読み解く3つの教え
ファクトフルネスを読んで、ビジネスや実生活で使える形で応用すると、次の3つが挙げられます。
本能に振り回されないこと
人間の本能が判断に大きな影響を及ぼしており、誇大解釈をする傾向にあります。
この事実をしっかりと認識することが、情報を正しく判断する一歩目になるということです。
情報にまつわる全てのフィルターを見抜くこと
「全て」というのはまさに全てで、情報を発信している人、情報の発信源となる人、情報を受け取る自分、あらゆるフィルターが情報を湾曲させる恐れがあるということです。
何度も立ち止まり、あらゆる角度で物事を見つめることが重要です。
データに囚われて短絡的な思考に陥らないこと
データはあくまで数字であり、平均などは参考意見にしかならないということです。
その平均の背景には、数多くの事実があり、その事実にしっかりと着目すべきだということです。
まとめ
ファクトフルネスは情報収集精度を高めるための新しい気づきを得ることができます。
穿った考えを持たないようにと意識してはいたが、自分と遠い情報ほどいつの間にか偏見を持っていたことに気付かされます。
視野を広げたい方には最適な1冊になるはずです。