『所定労働時間』と『法定労働時間』の違いとは?2つの労働時間を分析

「所定労働時間を超えた残業代に関して割増賃金が発生するんでしょ?」と思っている方、残業代を多く払いすぎている可能性があります。

そうならないためにも、所定労働時間と法定労働時間の違いについて、きちんと理解しておきましょう。

労働時間とは

労働基準法で労働時間の明確な定義はありませんが、過去の最高裁判所の判例では下記のように定義されています。

労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。

労働時間に含まれるかどうかのポイントは、「使用者の指揮命令下に置かれたもの」かどうかという点です。

下記が大まかに分けた分類です。

労働時間に含まれるもの 始業前の準備、終業後の片付け、着替え、手待ち時間、勉強会・研修
労働時間に含まれないもの 休憩時間、移動時間

定期健康診断は労働時間に含まれるのか?

会社は従業員に対し、1年に1回以上健康診断を受診させる義務があります。

労働安全衛生規則第44条(定期健康診断)
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一 年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

この定期健康診断は労働時間に含まれるかどうかという点ですが、厚生労働省の回答では「受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきもの」と定めています。

また、特殊な業種についた場合の『特殊健康診断』は、「労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断ですので、特殊健康診断の受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要」なため、労働時間に該当します。

2つの労働時間

労働時間の範囲に関して明確になったところで、労働時間の2つの種類についてお伝えします。

労働時間には性質の異なる2つの種類があり、所定労働時間法定労働時間です。

所定労働時間

所定労働時間は、法定労働時間内であれば自由に会社ごとに決めることができ、就業規則雇用契約書に明記する必要があります。

極端な話、所定労働時間を1日4時間と定めることも可能です。

法定労働時間

所定労働時間は会社ごとに自由に決められるのに対し、法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間と労働基準法で決められています。

労働基準法第32条
1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

ただし、特定の業種の場合、特例措置対象事業場という扱いになり、週の法定労働時間が44時間となります。

業種 該当するもの
商業 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、出版業(印刷部門を除く)、その他の商業
映画・演劇業 映画の映写(映画の製作の事業を除く)、演劇、その他興業の事業
保健衛生業 病院、診療所、保育園、老人ホームなどの社会福祉施設、浴場業(個室付き浴場業を除く)、その他の保健衛生業
接客娯楽業 旅館業、飲食店、ゴルフ場、娯楽場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

法定労働時間を超えて労働を強いる場合、36協定の提出が必要になります。

36協定のルールから誰でもできる締結までの流れを完全公開

所定労働時間と法定労働時間の残業代の違い

所定労働時間と法定労働時間の時間的違いがわかったところで、最も重要な残業代の計算方法についてもお伝えします。

残業代の計算方法は、所定労働時間と法定労働時間によって異なります。

所定労働時間と法定労働時間

所定労働時間を超えた残業代の計算方法

残業代=1時間あたりの賃金×残業時間

法定労働時間内の所定労働時間の残業は割増賃金が発生しません。

法定労働時間を超えた残業代の計算方法

残業代=1時間あたりの賃金×残業時間×1.25

法定労働時間を超えた残業に関しては、割増賃金が発生します。

そのため、この法定労働時間を超えた残業かどうか、という点は非常に重要になっていきます。

週60時間以上は割増賃金50

平成22年4月1日の労働基準法の改正により、大企業は1ヶ月60時間を超える法定労働時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられています。

中小企業は今まで猶予期間として25%増で問題なかったのですが、平成31年4月1日より、中小企業も一律50%増の支払い義務が課せられることが決定しました。

変わった労働時間

2つの労働時間を説明しましたが、業種によっては時期によって必要な労働時間が異なったり、月の月初と月末などで忙しくなるケースがあります。

そんな会社のために、少し特殊な労働時間制度があることはご存知でしょうか。

変形労働時間制

業種によっては、冬はやることがなく、夏場はとにかく忙しいというケースもあると思います。

上記のように、時期によって忙しさが大きく異なる場合につける制度が変形労働時間制です。

通常、労働時間はは1ヶ月ごとに清算するのですが、変形労働時間制であれば最大1年間で労働時間を調整することができます。

労働基準法第32条の2
1.使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
2.使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

フレックスタイム制

出勤時間・退勤時間を、一定の範囲内で従業員が自由に決められる制度がフレックスタイム制で、所定労働時間を『コアタイム』『フレキシブルタイム』に分ける制度です。

労働基準法第32条の3
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第2号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
1.この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2.清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が労働基準法第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)
3.清算期間における総労働時間
4.その他厚生労働省令で定める事項

みなし労働時間制

営業が多い会社や、ほぼ毎日残業が行われる会社は、残業代をあらかじめ給与に含めることができます。

その制度をみなし労働時間制言います。

労働基準法第38条の2
1.労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2.前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
3.使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

所定労働時間と法定労働時間の違いのまとめ

所定労働時間と法定労働時間の違いは下記の2通りです。

  • 所定労働時間は会社ごとに自由に決められ、法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間と決まっている
  • 法定労働時間を超えた残業に対してだけ、割増賃金が発生する

所定労働時間と法定労働時間を正しく計算し、余計な残業代を払わないように注意しましょう。

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中澤 寛

ラクロスで世代別日本代表になり、旅がしたいというただ一心で、就職せずにとりあえず路上で靴磨きの商売を始める。

その後、独学でプログラミングを学び、ウェブアプリケーション・システム開発を受託で請負、200以上の開発に携わる。

【使用言語】 HTLM・CSS / JavaScript / PHP / Python 。