労働協約とは?締結方法・適用範囲・法的効力・締結内容を完全網羅

雇用契約書、就業規則等、会社を設立して必要な書類を多数用意しなければならないと思います。

その中に、『労働協約』という言葉が頻繁に見受けられ、「今すぐ必要はないが、どんなものか知っておきたい」という方も多いと思います。

そんな方のために、労働協約の基本的な部分をお伝えします。

労働協約とは

「労働協約」とは、労働条件や労使関係のルールに関して、使用者と労働組合との書面により取り交わした約束事です。

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労働組合法第14条
労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

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労働協約の締結は、両当事者の署名又は記名押印のみで法的効力を発揮します。

上限は3年とされており、これを超える締結をした場合、3年の期間を定めたものとなります。

期間を決めない場合、継続的に労働協約が適用されるが、90日前に解約の意思表示をする必要があります。

労働協約、労使協定、就業規則の違い

従業員との労働条件を締結する規則として、『労使協定』『就業規則』が挙げられます。

これらの違いについてみていきます。

労働協約 労使協定 就業規則
契約者 労働組合 過半数労働組合や過半数代表者 過半数労働組合や過半数代表者
締結方法 書面に署名捺印 書面に署名捺印 意見聴取
適用範囲 基本的に労働組合員 全従業員 全従業員
契約内容 労働条件や労働組合と使用者の関係 労働条件の法定義務の免除や免罰 労働条件
法定効力 あり 単独ではなし あり

上記3つの労働契約の中で、最も効力を発揮するのは労働協約です。

法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約

労働協約の適用範囲

労働協約は基本的に労働組合員に適用される『模範的効力』を有しています。

労働協約に定められた労働条件の基準に違反する労働者との契約は無効となります。

労働組合法第16条
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

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しかし、一定の条件を満たした場合、動労協約は組員以外の者にも範囲が拡大します。

これを『一般的拘束力』と呼び、下記いずれかに該当した場合に自動的に適用されます。

労働組合法第17条
一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。

労働組合法第18条
一の地域において従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第二項の規定により修正があつたものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。
2 労働委員会は、前項の決議をする場合において、当該労働協約に不適当な部分があると認めたときは、これを修正することができる。
3 第一項の決定は、公告によつてする。

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労働協約の中身

労働協約で締結する内容は、労働者の待遇についての『模範的部分』、労働組合と使用者との関係についての『債務的部分』に分けられます。

下記が労働協約の主な取り決め範囲ですが、全て最初から整えるのは難しいので、1つずつ決めていき(個別協約)、最終的に網羅(包括協約)するという流れになります。

規範的部分(労働者の待遇についての基準)

  • 1.始業、終業時刻、休憩時間、休日、諸休暇、交替制その他就業時間に関する事項
  • 2.賃金、一時金に関する事項
  • 3.退職に関する事項
  • 4.退職金その他の手当に関する事項
  • 5.安全衛生に関する事項
  • 6.災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 7.表彰、制裁に関する事項
  • 8.採用、昇任、降任、人事異動、休職等の人事に関する事項
  • 9.福利厚生に関する事項

債務的部分(労働組合と使用者との関係を定めた部分)

  • 1.組合員の範囲に関する条項
  • 2.組合活動に関する条項
    • ア.就業時間中の組合活動
    • イ.在籍専従制度
    • ウ.チェックオフ
  • 3.ユニオンショップ制に関する条項
  • 4.団体交渉に関する条項
    • ア.団体交渉手続き
    • イ.交渉担当者
    • ウ.交渉事項
    • エ.運営方法
  • 5.平和条項
    • ア.争議行為の予告
    • イ.争議行為の不参加者
  • 6.苦情処理条項
  • 7.労使協議制

労働協約まとめ

  • 労働協約は労働組合がないと成立しない
  • 労働協約は両者の署名・記名押印で効力を発揮する
  • 労働条件で法令の次に最も強い効力を有する
  • 適用範囲は基本的に組合員のみだが、一定の条件を満たせば適用範囲が拡大する

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