36協定は1分の残業でも必要?基礎知識と2019年4月からの「特別条項付き36協定」の改正について
2018.03.16
「36協定って何?従業員に残業させる場合に必要なの?」
「36協定を提出すれば残業時間の上限がなくなるってほんと?」
「2019年4月1日から36協定が変わるの?」
この記事は36協定に関する正しい情報を必要としている方に向けて書いています。
初めまして、中澤と申します。
大学を卒業して路上で靴磨きの商売を経て、現在はウェブサービス開発にいそしんでおります。
従業員を雇うとやらないければならない手続きは数多く存在しますが、その中でも知らないでは済まされない手続きが「36協定」です。
36協定は1分でも時間外労働が発生する場合に必ず必要な手続きで、8割以上の会社が該当します。
36協定の正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」であり、労働基準法36条が根幹となる考え方なので「36協定」と呼ばれています。
今回は、36協定に関する正しい知識をお伝えするとともに、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)からの変更点もお伝えしようと思います。
残業・休日出勤が発生する場合に必ず知っておきたい「36協定」とは
36協定は、労働基準法に定められた法定労働時間あるいは法定休日を超えて従業員が働く場合に労働基準監督署への必要な書類です。
【法定労働時間】 ⇒ 1日8時間、1週間40時間(特例措置対象事業場は44時間)
【法定休日】 ⇒ 4週間に4日の休み
法定労働時間および法定休日を超える時間を「時間外労働」と呼び、労働基準法では時間外労働を従業員にかすことはできません。
しかし、現実的に時間外労働が行われないことは難しいため、過半数以上の従業員の代表者の合意があれば時間外労働を認めてもいいという制度が「36協定」になります。
36協定の提出義務が発生する2つのケース
- 法定労働時間を超える場合
- 法定休日を超える場合
つまり、法定労働時間および法定休日を超えて1分でも残業が発生する場合には36協定の提出が必要になるため、8割近くの会社は36協定が必要になります。
ただし、所定労働時間が7時間の会社の場合、1時間の残業が発生しても1日の労働時間が法定労働時間を超えないため、36協定の提出義務はありません。
36協定を提出しなかった場合は「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」
しかし、いきなり罰則が科せられるのではなく、基本的にはまずは労働基準監督署から是正勧告が行われます。
是正勧告とは「あなたの会社は残業があるにも関わらず36協定を提出していませんよね」という者です。
ただし、是正勧告が行われるのは一般的な話であり、悪質な労働基準法違反の場合は即罰則が科せられる可能性もありますので、時間外労働が発生する可能性がある場合は労働基準監督署に36協定を提出しておきましょう。
36協定締結後の労働時間及び労働日数の上限に関して
36協定を締結したからといって労働時間の上限がなくなるわけではありません。
雇用契約内容にもよって変わりますが、1週間から1年単位で細かく労働時間の上限が定められています。
一般労働者 | 変形労働時間制 | |
---|---|---|
1週間 | 15時間 | 14時間 |
2週間 | 27時間 | 25時間 |
4週間 | 43時間 | 40時間 |
1ヶ月 | 45時間 | 42時間 |
2ヶ月 | 81時間 | 75時間 |
3ヶ月 | 120時間 | 110時間 |
1年間 | 360時間 | 320時間 |
36協定を締結すると法定休日の概念はなくなり、上記時間外労働時間を超えない範囲であれば毎日出勤しても問題ありません。
また、「繁忙期だけ1ヶ月の残業時間が1ヶ月40時間を超えてしまう場合はどうすればいいの?」という方のために、36協定には時間外労働時間の上限を超えて労働を認める「特別条項付き36協定」があります。
36協定の時間外労働を延長できる「特別条項付き36協定」
2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)以降と以前では制度の内容が大きく異なります。
2019年3月31日以前 | 2019年4月1日以降 (中小企業は2020年4月1日) |
|
---|---|---|
時間外労働の上限 | なし |
|
罰則 | なし | 労働基準法第119条違反 (6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金) |
回数制限 | 年6回 |
実は、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)までの特別条項付き36協定は、年6回までは時間外労働の上限がない状態でした。
極端なことをいえば、6ヶ月間であれば24時間働かせても法律上は問題という状況でした。
しかし、これでは問題だということで特別条項付き36協定の残業時間にも上限が設けられ、特別条項付き36協定の時間外労働時間の上限を超える場合は罰則が設けられました。
なお、知識として覚えておいたほうがいいこととして、有給等の給与計算には含まれるが事実上労働していない時間に関しては、36協定の労働時間の計算には含まれません。
36協定の提出書類
提出書類として必要なものは「時間外労働・休日労働に関する協定届」のみとなります。
時間外労働・休日労働に関する協定届に労働基準監督署の印鑑を押したコピーが必要な場合は、原本とコピーの2部が必要になります。
ダウンロードや記入例は「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)」よりご利用ください。
改正前に関しては、特別条項付き36協定は特別な様式があるわけではなく、時間外労働・休日労働に関する届出書に36協定の時間外労働の上限を超える旨が記載すれことになります。
また、中小企業は2020年から新しい制度が施行されますが、2019年4月1日から新しい書式で提出しても問題ありません。
36協定の内容が年の途中で変更となる場合は再提出が必要
中小企業は労働条件の変更が多々あると思います。
また、近年多い自然災害の関係で、労働時間に大幅な変更が起こる場合もあります。
その場合、36協定に記載のある変更に関しては、36協定を再度提出する必要があります。
期間に関しては遡ることはできませんので、改めて提出日から1年以内で設定することになります。